THE FORUM 世田谷

みづ と みどり 【ときのうてな 連“本”第一回 塚田有一さん】

山水思~1

紺碧の空を吹き抜ける風が、まばゆい季節になりました。

GWも仕舞いの週末、FORUMでは、華道家、造園家の塚田有一さん、和暦研究家、高月美樹さん、そしてFORUMサイト編集長であり、ランドスケーププランナーの滝澤恭平によるコラボレーションイベント、「ときのうてな」が始まります。
第一回目は、FORUMの庭で、今も活躍している井戸や、水流にちなんで。古来よりの風習である「水口祭」をテーマに、世話人3人がそれぞれの切り口から紐解きます。

さらに、このイベントを味わい深く楽しんでいただけたらと、3人が、連歌ならぬ連“本”形式で、“みず”“水口”などをテーマに、本を選んで下さりました。イベントにご参加の方も、そうでない方も、何かを感じていただけたら幸いです。

◆ ときのうてな第一回 ~水口を祀る~ ◆
日時  5月11日(土) 13時半~17時
場所  THE FORUM 世田谷(サロン)
詳細とお申し込み
【facebook】
http://www.facebook.com/home.php#!/events/150147315158177/
【PeaTiX ※参加費を事前にお支払いいただく必要はありません。お申し込みのみの方は、記載の連絡先まで、ご連絡ください】
http://peatix.com/event/12973

 

ときのうてな 連“本”第一回 塚田有一さん
みづ と みどり 

「水(みず)」。
旧仮名遣いでは「みづ」。

みどりとみづは語根が一緒。

「みどり」。
もともとはいわゆる緑色ではなく、今、わたしたちが「緑色」と呼んでいる色は「青(あを)」が含んでいた。

語源の話は、発音の問題をはじめ、さまざまな要素がからまっている。簡単にはいえないけれど、体験したことをまじえて私見を書いてみる。

「みづ」は「満つ」「充つ」に通じ、なにかがいっぱいになった状態だろう。瑞々しい、瑞枝。。。「蜜」も花や果実が熟すと生まれるものだから、なんにせよなにかがまさに弾けそうな、機の熟した状態、いのちの充満した様子をいうのだろう。

「みどり」の「み」は「みさを」の「み」でもある。その「み」を「とる」こと。
「み」は植物の若い芽のことでもある。
それは嬰児(みどりご)や「みどりの黒髪」にも通じている。
「みさを」の「み」は、「神や霊」のことでもある。
「さを」は先にでてきた「さ+あを」。
だから「みさを」はとても神秘的な青ということだろう。
常緑樹が象徴する永遠の命でもある。

例えば、みづえ「瑞枝」は、生命にみちた枝。
みずみずしい、の、み、は みどり でもあり、みず でもある。

「みどり」と言っても、深いみどり、若いみどり、いのちの初々しさ、たくましさ、その間も幅広く表したりもする。
これが大事。意味はひといろではなく、多層で幅も広く、重なり合っている。
そしてまた「みどり」は境界。
この話しは今度の「ときのうてな」で話したいと思っている。

一般的に「緑(みどり)」といえば、いま、植物を指す。そのままエコや環境問題にもつながる。実はそれは萌え出てくるいのちへの感受性をとりもどすことなのだろう。
お節供やお祭りのとき、形代に穢れを移し、禊ぎをする。「みそぎ」は「みづをそそぐ」でもあろうし「み」を「削ぐ」ことでもある。「けがれ」とは「気が枯れる」ことだが、枯れた(死んだ)それを流すことで生まれ変われるわけだ。新しく生まれる=「みどり」なのだ。

四季がはっきりして、豊かな瑞穂の国で、ひとつの季節が去り、次の季節が訪れる、その節を祝うのが節供であり、僕たち自身がそうして新しくなり、其れに肖って再生を願う。まさに「みどり」のおこない、みどりというふるまいがそこにある。
風土が情意をつくる。
モンスーンアジアの辺境の列島で、海に囲まれた多島海列島で、揺れ動く4つのプレートのはざまで、4つのフローラにくるまれて、複雑な地形を持つこの島で暮らしてきた僕たちは、風土の育む「み」たるものに、情緒も、美意識も、くらしそのものも、宇宙観も影響を受けないはずも無い。

「みづ」や「みどり」は、僕たちの情意そのものを生み、いつでも接していて、見えない何かを呼び醒ますものでもあろう。

風薫る季節。「ときのうてな」で何が横溢するか、楽しみです。

塚田有一

 

お奨め本 『山水思想』(松岡正剛著/ちくま文庫)
『常世論』(谷川健一/講談社学術文庫)

 

~ ときのうてな 連“本”第2回は、滝澤恭平によるブックチョイス。5月7日(火)の掲載を予定しています。お楽しみに! ~

※『山水思想―「負」の想像力』(松岡正剛著/ちくま学芸文庫)、『常世論(とこよろん)―日本人の魂のゆくえ』(谷川健一著/講談社学術文庫)は、THE FORUMのラウンジに購入予定です。

 

2013.04.30 Tue by THE FORUM official from article

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