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#009 コドグラファー育成人・中村こどもさん

中村こどもさんメイン

コドグラファー育成人・中村こどもさん

フツウに考えて、子供は幼稚な存在じゃない。
はさみと同じ道具として、カメラにできることを伝えたい。

―― こどもさんは、子供に一眼レフで写真を教える『コドグラフ(子供+フォトグラフ)』を立ち上げ、“コドグラファー”の育成に力を注いでいます。コドグラフをはじめたきっかけは?

中村 どうして、子供にピアノが弾けるって思ったんだろう、って。
僕は、ピアノやってないんでわかんないですけど、複雑な譜面を見ながら、両手で同時に鍵盤を叩いて、足でも何かやってますよね。しかも、あんなに高価で大きいものが、子供の習い事として一般化した。考えてみると不思議じゃないですか?あんなの子供にできるってフツウ思わない。でも実際できるなら、写真の方が簡単だろうから、習えるだろうと思ったんです。

実は、ここに来る時も考えてたんですけど。旅行先やレストランで、携帯で写真を撮るとか、ちょっと馬鹿にされがちですけど、どうして多くの人がしてしまうのか。たぶん、理性よりも、本能でそうしている気がしますよね。であれば、単純に、カメラは使えた方がいいと思うんです。靴を履いた方が早く走れるとか、はさみで、手ではできなかった事ができるようになったみたく、カメラも、身体性を伴った便利な道具として使えたほうがいい。

それに、インターネットが普及し、じゃあそこに何を載せるかって考えた時に、水族館に可愛いアザラシがいたと言葉を尽くして書くのと、写真を見せて伝えるのでは、当然写真の方がシンプルで強い。翻訳もいりませんしね。
教育が、言語コミュニケーションをより円滑にしたように、画像コミュニケーションも、教育によって円滑化するのは、次の発展として自然なことだし、これからは、カメラを使って発信する力、画像から読み解く力を鍛えて、損はないと思ったんです。

 

子供が撮影
©NAKAMURA Codomo (中村こどもさんブログより)

―― なるほど。それにしても、一般に普及した、小型軽量化したコンパクトカメラではなく、本格的な一眼レフを構えた子供の姿に、少し驚きました。

中村 僕、いわゆる子供らしさみたいな…。“幼稚性=子供らしさ”だと考えるのが、あんまり好きじゃないんです。カメラ任せで撮れるカメラを持たせて、アングルの低さとか、ブレたり、ぼけているところを「大人にはない、子供ならではの感性」みたいに評価するのは、その文化が幼いからだと思うんですよね。だってフツウに考えて、子供は幼稚な存在じゃないじゃないですか。

ちょっと誤解されがちなんですけど、コドグラフでは、カメラマンを育てている訳でも、芸術的な写真を撮ってほしい訳でもないんです。僕が教えているのは、カメラにできることを知ってもらうこと。

現代のコンパクトカメラの進化は、料理に例えると、めんつゆ一本で和食を作っているような感じだと思うんですね。めんつゆの量だけで、味の調節をしているような。でもそうじゃなくて、写真を撮るプロセスには本来、各種調味料があって、ばらばらに組み合わせると美味しいし、組み合わせると君自身の味がでるんだよと、一眼レフを使うことで伝えているんです。
例えば、塩が光だとしたら、入れた時と入れない時を見比べることで、味を覚えてもらう。その上で、自分の好きな方を選ぶようなイメージなんですけど。

これは一眼レフでも、デジタルカメラだからできることだと思いますね。つまり、フィルムカメラとデジタルカメラは、撮ったものをすぐに見返せて、見比べられると言う点において、全く違うものなんです。漠然と、何が好きかって聞かれるとわからなくても、2枚を比べてどちらが好きかなら、言えるじゃないですか。

そうやって、カメラをちゃんと扱えるようになると、子供の好みや個性を認識しやすくなるので、大人が接する時、よりわかりやすくなるのはあると思いますね。小学校でも、大人しい子は放っておかれがちだけど、撮影履歴で心の動きがわかるし、意外な一面を知れたり、尊重される子も出てくる。
この間子供たちに、「写真を撮れるようになって何が良かった?」って聞いたら、「思い出をとっておける」って答えた子がいたんですね。まあ、当たり前なんですけど…(笑)

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―― 子供の頃の思い出が、当時の視点で残ると言うのは、不思議でも素敵でもありますね。だけどカメラには、子供には難しい専門用語も多いと思うのですが。

中村 専門用語はがんがん使ってますよ(笑)
例えば、F値とかISOとかシャッター速度って、概念としては簡単なんですよ。大人は、普段聞きなれないから難しいと感じるけど、子供たちは、“唐辛子”とか他の新しい言葉と並列に聞くので、すんなり受け入れてくれます。逆に、“被写体”など、平易な言い方にできる言葉は極力使いませんね。“撮る人”だったり“撮るもの”と言えばいいので。

教える時には、漢字など言葉が難しいのか、概念が難しいのかを分ける必要があって、ひとつひとつ検証しながら、教え方のノウハウを蓄積しています。それをまとめて、ピアノのバイエルみたいなものができたら、コドグラフがもっと広まると思うし、将来的には、全世界の学びたい子に行き渡るといいと。まずは、小学校の授業で扱えるように、「学ぶため」と言う哲学でつくられた、安価な教育用カメラの開発は必須だと思います。

…カメラの開発?そりゃあもちろん、携わりたいです!

—— 最後に。
THE FORUMで、中村さんがやってみたいイベントはありますか?

中村 フツウに近所にビラまいたりして、ここら辺の子供たちと、コドグラフをしたりとか。あと、弦巻さんのインタビューの写真を、一度子供たちに撮らせてみてほしい!(笑)

写真は、成果物で評価されがちですけど、撮影する姿はエキサイティング。大きな紙に書く書道の大会みたく、結果ではなく過程、撮る行為そのものも魅せるコンテストも、いずれ出てくると思いますし、ここでも何か、できるといいのですが。

 

 

コドグラフ http://codograph.net/
(ルビつきホームページ) http://trans.hiragana.jp/ruby/http://codograph.net/about/
陽だまりカメラ~子供写真館~ http://hidamari-camera.com/

2013.05.22 Wed by 弦巻 響子 from interview

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