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フンとホン 【連載第2回】

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もっとトイレで本を読もう!
ということで引き続きオススメ本を紹介します。

今回は、太平洋の赤道近辺の島々に残され伝えられてきた神話を集めた『南島の神話』という本。中公文庫から出ており入手もしやすく、旅行のお供にも最適ですが、トイレのお供にもオススメです。

まず1つ1つが短いお話をたくさん収録しているというこの本の構成がお供にとてもいいです。トイレの営みは短くて数分、長くても30分くらいが相場でしょう。長い時間いるのは、後々のダメージを考えると危険です(話はそれますが、長い時間居ると危険な場所、というのが家の中にある、というのはオモシロイですね。そんな危険なところで半裸になりながら本を読む私。かっこいいのか悪いのか。ともかくフンバリどころではあります)。短い間で読める本が、お供にはよいのです。『南島の神話』は、どんなに長いものでも、5分もあれば読めます。短いものは1分で。そこに、とてつもなく古い時代から人間が考えてきたことが凝縮されているのです。

“神話”というと、ギリシアの神々たちの深い含蓄のある物語や、ヤマトタケルの英雄譚のような、すこし立派なお話をイメージする方も多いでしょう。しかし、太平洋の南の島で暮らしてきた人たちの編む神話は、そんなイメージをひっくり返すものばかりです。泥んこ遊びをしていたら世界ができたとか、食べものが腐っちゃって大変だった話とか。あとは神話の大好物、排泄物の話。

神話は、身の周りにある物事を巧みに利用して創られるものです。例えば、近くに居る動物やその色と声(臭い臭いを発する動物も大人気です)、村を見守る山に生えている植物とその効用(薬だったり毒だったり)、面白い地形や特徴的な場所(滝や温泉)、歴史(地震や津波がどうして起こるのか)など。こうした自然物や出来事を、それはそれは丁寧に観察し、それらを素材にした料理をつくるようにして、昔の人たちは神話をつくりました。

その中でも、われわれが日々トイレで行なっている排泄行為は、とびっきりの重要性をもった神話の素材になっていることが、この本を読むと分かるでしょう。トイレでわれわれが行なっているまさにその行為を、昔の人たちも同じように行っていたこと。そこからとてつもなく深い哲学が流れ出ていることを、5分の間にまざまざと感じることが、もしかしたらできるかもしれません。

 

~ 早川アユムさんによるブックセレクション『フンとホン』。次回、最終回は4月18日(木)の掲載を予定しています。お楽しみに! ~

※『南島の神話』(中公文庫BIBLIO)は、THE FORUMのトイレにて実際にご覧いただけます。

2013.04.11 Thu by 早川 アユム from Books

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