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【ワールドリスニングデー2014@松陰神社&FORUM世田谷】イベントレビュー

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サウンドスケープの提唱者R. Murray Schaferの誕生日にちなんで毎年世界各地で行われているWorld Listening Day。

日本ではTokyo Phonographers Unionの主催でこれまで、渋谷20202、善福寺公園遊工房、世田谷ものづくり学校、さくらWORKS(関内)で、開催してきました。

今回で5回目となる今年は、 Phonographerである清水博志が在籍するHITO+HITO Promotionが入居している縁も有り、THE FORUM 世田谷のサロンを借りて開催されました。

また過去にFORUMでのパーティーでEarthcapeの団塚さんを介して 知り合ったサウンドデザイナーの庄野泰子さんにも声をかけたところ、参加いただけることになりとても充実した催しになりました。

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photo by Kimura Masabumi



第一部はサウンドウォーク。
4時に松陰神社に集合し、フォノグラファーズ5名、こども連れの親子2組、を含む参加者15名で街を歩きました、当日は曇天でいまにも雨が降りそうな天気でしたが、難しい前置きや解説もなしで「音を聴く、音を楽しむ」とうテーマで松陰神社の境内を思い思いに耳を澄まして歩くことから始まりました。
神社の砂利を踏みながら手水舎の水の音に耳を傾けたり大きな木立に囲まれた境内にたたずんだり、、 ある種守られた空間である神社という場所は独特の音響空間でもあります。
「気」も良いし、耳を開いていくのにはもってこいの場所でした。 この日は気圧のせいか、湿度が高かったせいか、全体的に大気にフィルターがかかったような とても静かな音風景という印象を受けました。
神社をでて今度は世田谷区役所までの道、世田谷在住のsawakoさんのナビゲートで一行ゾロゾロと歩きます。 通り過ぎる車の音、大きな建物の空調の排出音、公園で遊ぶ子供たちの声、サッカーボールの音、虫や鳥の声、、、それらが建物にあたり跳ね返った反響音。 自然の音、人工的な音は区別されることなく絶えず耳に入ってきます。

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photo by Kimura Masabumi



それぞれに独自の振動があり周波数がありますが、どこにフォーカスするかによって不思議と聴こえ方は変わってきます。 人は聴きたい音を無意識に選択しているようです。
交差点を渡って世田谷区役所の裏手に周り建物に挟まれた広い敷地まで来たところでにわかに雨が降り出しました。一同、建物の公舎を繋ぐ通路で雨宿り。傘をさして彷徨いたり、敷地内ステンレスのグレーチングにあたる雨の音がいいとか..傘によっ雨音が違うとか、普段気づかないものが見えてきます。
小降りになったのでまた歩き出します。路地を抜けて松陰神社通り商店街の方へ抜けていきます。車道から路地へはいるとまた音の景色が変わります。
水滴のしたたる音、排水溝の中で反響する音が水琴窟のようだったり。。ちょっと角を曲がっただけで全然違う音風景が立ち現れるのでハッとします。 夕飯の支度をする台所の食器の音や家の中の物音、耳に入ってくる他人の生活音にちょっとホッとするような愛おしいような気持ちになります。 雨が色んなものを洗い流してくれたので街の色も鮮やかになり大気も澄んで雨がやむ頃には歩き出した頃とは違う鮮やかな音像が現れました。

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photo by Kimura Masabumi



この頃にはもうすっかり皆さん耳が開いています。言葉をかわさなくても自然と興味のある音に吸い寄せられていきます。 世田谷線沿いの道にでると皆線路沿いに並んで電車がくるのを待っていました。端から見たらまるで鉄道オタクの集まりのようです..。。
小さな遊戯公園のフェンス越しに隣接する家の洗濯機からの排水音がとてもいいアンビエンスを作り出していました。 商店街の中程に出たところでサウンドウォークは終了でした。 各自商店街で買い物をしたりしながらFORUMに移動してラウンジにてそれぞれ食事をとったり歓談したり。なんだかとてもアットホームな時間。。その間にメンバーは音響のセッティングをしたり。

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photo by Kimura Masabumi



第二部はTokyo Phonographers Unionのパフォーマンス。
今回のメンバーはMarcos Fernandes、安永哲郎、sawako、清水博志、宮本一行の5人。 フィールドレコーディング音源を使った即興演奏です。 順番に5分づつ音を繋げていき最後は全員加わっていくという構成で、30分ほどのパフォーマンスでした。 当日の天気のせいか全体的に水の音を使う人が多かった気がします。
ある音に対してまったく関連性のない音が混ざって来たり予期しない音が被さって来たりするのがこのパフォーマンスの面白みですが、それはオーディエンスだけでなく演者も同じです。
場所や時間を飛び越えて音が立ち上がってきます。録音された環境を思い描いたり、その音から想起される記憶にアクセスしたり、聴く人は同じ音を聴きながらそれぞれ頭の中では違う風景をみているのかも知れません。 これは結構やみつきになる体験かもしれません。。

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photo by Kimura Masabumi



その後は休憩をはさんでサウンドアーティスト庄野泰子さんの活動に関するトークをして頂きました。
福島県小名浜港2号埠頭整備事業の一環としてデザインした「Wave3」と「Umi-Tsukushi」の話、 茅野市で行われたプロジェクト「Play with sound 音風景の可能性」の紹介とそこで公募した作品や上演されたいくつかの作品を紹介、またその一環として宮本さんが発表した作品(諏訪湖の写真を加工した映像とサウンドスケープ音とともにリアルタイムでトロンボーンを演奏するというパフォーマンス)を実際に再演して頂きました。
ミニマルドローンな映像+音像に重ねて空間を移動しながら演奏されるバストロンボーンのシンプルなメロディは、サウンドウォークの時に聴いたチャイムや踏切の音がモチーフにっているという心憎い演出でした。。 サロンの空間に響くトロンボーンの音がそれまでとは違った耳をまた開いてくれました。
9時をまわったあたりで主催のマルコスさんの挨拶でイベントは終了となりました。 子供から大人まで幅広い年齢層が集い、FORUMの落ち着いた雰囲気も手伝ってか、出演者も参加者もなんだか終始ゆったりとしていて、、シンプルなのにとても贅沢な時間でした。
サロンの空間に響くトロンボーンの音がそれまでとは違った耳をまた開いてくれました。 街は(”フォト”ジェニックならぬ)”フォノ”ジェニックな音風景で溢れています。 皆さんも視覚に頼りすぎず、時に聴覚的想像力を少しUPして過ごしてみると日常のなかに見えなかった何かが見えてくるかもww

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photo by Kimura Masabumi



参考URL
■TokyoPhonographersUnion
http://www.tokyophonographersunion.com/

■イベントFBページ
https://www.facebook.com/events/1510082732556913/?ref_dashboard_filter=calendar

■playwithsoundscape 音風景の可能性
http://www.chinoshiminkan.jp/playwithsoundscape/

2014.07.21
workshop
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